僕の会社には、役員ランチミーティングなるものがある。
普段まともに会話をする機会すらない役員と「ランチしながら会話しよっか」という、わりとフランクな企画だ。
この企画自体は、まあまあ前からやってたみたいだが、僕の所属する部署は、会社の中ではマイナーでかつ特殊な部署なので、今までメンバーにノミネートすらされていなかった。
それがここ最近、
「あれ?そういえば参加してないよね?」
と人事の人が気づいたらしく、急に呼ばれるようになった。
月一ぐらいで開催してるみたいなので、4人くらいしかいない部署の一員である僕には、すぐに順番が回ってきた。
ランチミーティング
出席者は全部で9人。各部署から25〜40歳位までの人を無作為に選んだ感じだ。ランチミーティングという名前の通り、ランチしながらお互いの近況について語り合うようなものだった。
一応、今の支店には2年半はいるのだが、顔を見た事すら無い人ばかり。400人くらいはいるから、仕方ないかなとも思う。
役員
僕の”役員”という人達の印象は、体育会系で下の人間に対して厳しく、自分にあまいというもの。
前職を含めて、過去の上司がだいたいそんな人だったから。
クセがあって、声(発言力)が大きくて、ちょっと面倒なややこしい人、が多い。
逆に、社長の子分みたいな感じの人もいて、なんでこの人が…という事も多かった。えこひいきたるものが、大人の社会にもあるんだなと理解した。
けど、この役員さんは全然違った。
一言でいうと、
人格者
だった。
人事
役員だったり、部長だったり、上に行く人はそれなりに優秀だ。
うちの会社もまぁまぁ大きい会社なので、特にそれは感じていた。
僕なんかは到底なる事はできない。(そんな気もないし、まず仕事に対してのモチベーションが低い)
でも、ただ優秀なだけではダメで、上から引っ張りあげてもらえる社内営業の力量が必要と思う。
うちの部の部長も、上からの引きが強かったと思ってる。
昨年は部署としての評価はイマイチだったけど、部長だけは昇進してましたから。
それも実力のうちって事でしょう。
とくに役員クラスになると、その辺りも別格な気がする。
役員が好きなタイプの人を上に引っ張る。
やはり類は友を呼ぶなので、やがて同じようなタイプが多くなる。
そんな印象だった。
うちの部署の担当役員なんかも、体育会系でクセがあって、パワハラチック。ある特定の人物を可愛がっていて、ああこの人は将来的に上にいくんだろうなぁと思っている。
この印象が強くすぎて、今回ランチした役員さんが、余計に人格者にみえたのかも知れない。
人格者
今回、一緒にランチした役員さんとは、一度部署全体の飲み会で食事をしたことがあった。
僕は基本的に人見知りで、知らない人や合わない人とは喋らない無口キャラなので、まともに会話をした訳ではなかった。
付き合いが薄い分、この人がどういう人なのか、あんまり分かっていない。
今回、話をしてみて、まず感じたのは、目線が低く、僕ら下の人間に対して気を使ってくれているということ。
そして博識で色んな事に興味があって、考えが柔らかいこと。
素直に、この人スゲーなと思った。
経営者と労働者
役員と社員の関係は、経営者と労働者の関係になる。
経営者ってのは、労働者に
「もっと俺のために働け!」
「やることやれ!」
というスタンスなものだと思っていた。
でも違った。
下の人には、下の人の環境や立場があって、その中で皆んな頑張ってるよね。皆んなが頑張ってるから、数字も伸びて達成してるんだよね。
と本気で思ってくれている、それ感じさせる人だ。
そんな役員さんが今回ランチミーティングの中で印象的な言葉を3つ言った。
・正直が良い
・世の為、人の為、感謝 ギブアンドテイク
・良く見るという事
正直が良い
「正直に生きないとしんどいし、嘘は何処かで無理が出てくる。だから正直が良いよ。」
別に特別な言葉ではないけれど、何となくそう言ってもらえると安心というか、ホッとしたところがあった。
普段の生活の中で、なかなか正直に生きてはいない。
と、僕は常日頃から思っている。
ホンネとタテマエ
という言葉があるけど、僕らの生活する世界には、それが蔓延しているのが実情だ。
物心ついた時から、これは刷り込まれていて、学校でどんなにつまらなかった運動会があっても、感想文には「楽しかった」と、とりあえずタテマエを書いておくみたいな感じ。
「出来ない事をできない」
とホンネを言うと怒られるので、とりあえず
「頑張ります」
とタテマエを言ってしまう。
このホンネとタテマエは、話をしていると大体は分かる。
無理してるとか、多分できないよね、とか。
これが鬱につながる要素だと思っているんだけど、それの本質は
「正直に言える。正直に生きる」
って事なんだろうな、と思っている。
今回ここまで深く話した訳ではないけど、多分この人は僕らのホンネを受け止めてくれる。
そんな風に思った。
世の為、人の為、感謝
「ギブアンドテイクって言葉があるけど、あれってgive(与える)が先で、take(もらう)は後。テイクアンドギブではない。何かを与えて、それに対して、相手がこちらに与えるわけ。そこに対して、感謝をする。そういうものだと思うよ。」
世の為、人の為、感謝というのは、ギブアンドテイクの言葉につながっている。
世の為、人の為に、自分がgiveする事で、takeを得る。そのtakeに対して感謝する。
そんな考え方、今まで頭になかったなぁ。
give and take
「あげたら、もらえる」くらいにしか考えてなかった。
良くみるという事
お茶のペットボトルを見ながら、
「これを絵に描けっていったら大変だよ。光がこう反射して、跳ね返った光がこうなってさ。なぜこれがそうなるのか、とかさ。自分探しで旅に出たりするけど、よく見たら身近に色んなものはあるんだよ。」
普段の生活の中で素通りしている多くの事の中に、様々な学びが存在している。
僕が普段は何も思わないことでも、人によってはそこから何かを得ることができる。
それには、もう少し物事に対して興味を持って、その対象に対して、もう少し深く入っていく必要がある。
簡単そうで中々難しいとは思うけど、目線を変える事で世界も変わるのだと思った。
所管
てことで、役員ランチミーティングはとても有益なものだった。
役員に、うちの会社に、こんな人がいるのか。と少し嬉しくもなる。
もう少しアンテナはって生活した方が、世の中が楽しくなるのかなと思った。
チコちゃんがいたら「ボーっと生きてんじゃねえよ」と、言われてるだろう。
ただ一つ後悔しているのは、せっかく役員と話ができるのだから、普段は聞けないような気になる事を考えていくべきだったと思う。
「何か聞きたいことがあれば、なんでも聞いてくれ。」
と言ってくれたが、誰も何も言えなかった。
思っている事の準備ができていなかったのもあるけど、そもそも質問しようと考えることすらしてなかった事に対して、勿体なさを感じる。
久々に、優秀な人格者に出会った。
そんなランチだった。
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